銀行にとって喫緊の課題は、AIをどうやって生産性やビジネスパフォーマンスの向上に役立てるか、ということです。
生成AIの驚くべき台頭により、人工知能に再び注目が集まっています。銀行経営層の中にも、明るい未来に胸躍らせる者や、ディストピア的なシナリオに不安を覚える者がおり、取締役会ではこれら両極端な立場からの議論が繰り広げられています。
その中で経営層は、生成AIによる経済的効果の評価・優先順位付け、技術アクセス費用の見積もり、速やかな全社展開に伴うリスクの管理など、多岐にわたる対応事項の洗い出しを今まさに進めているところです。これは慎重に評価を進める必要があります。
本レポートが提供するインサイト(洞察)は、生成AIへの期待を必要以上に膨らませることなく、銀行のビジネスモデルにどういったインパクトがあるのかを正しく見極める手掛かりとなるでしょう。さらに、関連リスクを軽減するためには、どのようなアクション・プランがよいかを把握する一助ともなります。こうした知見の基盤にあるのは、IBMがこれまで付加価値の高いコンサルティングや画期的テクノロジーを提供する中で培ってきた専門知識です。さらに、世界の主要な金融機関の経営層600人に対して実施したアンケートの結果も反映されています。
AIを効果的に監督し応用するには、適切なガバナンスに加えて、人間と機械のコラボレーションを再定義する必要があります。
アクション・ガイド
銀行はかつてないほどの目まぐるしいテクノロジー・サイクルに直面しています。素早く前進するためには、迅速かつ確立した全社横断のプロセスが必要となります。 以下に金融機関における生成AIの全社的な活用に向けた意思決定の指針として、10のアクションをご紹介します。
1. 自行のAIガバナンスとリスク・プロファイルを定義する
2. 選定したユースケースに優先順位を付ける
3. 自行のAI戦略を最終化する
4. 自行のデータ基盤をデータ・ファブリックを介して確立する
5. 自行のAIプラットフォームを選定し、適切なガバナンスを設計する
6. 選択した用途に最もふさわしいAIモデルを選定する
7. 生成AIをソフトウェア開発ライフサイクルに取り入れる
8. 最初のユースケースを実装し、経験を積む
9. スケールアップ・アプローチでAI戦略を取り入れる
10. 「AIファクトリー」を構築し、信頼できるAIを大規模に展開する
生成AIは単なる流行語ではありません。顧客との関係を刷新し、サービスの競争力を一変させるだけでなく、コアバンキングに関わる業務・オペレーションの進化や、サイバーセキュリティー強化まで広範囲に実現するものです。
「2024銀行業界グローバル展望」をダウンロードいただければ、以下の内容についてご確認いただけます。
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著者について
Shanker Ramamurthy, Managing Partner, Global Banking & Financial Markets, IBM ConsultingJohn J Duigenan, General Manager, Financial Services, Banking, Financial Markets, and Insurance Global Industries, IBM Technology
Paolo Sironi, Global Research Leader, Banking and Financial Markets, IBM Institute for Business Value
林智洋(日本語翻訳監修), 日本アイ・ビー・エム株式会社, IBMコンサルティング事業本部, 金融サービス事業部, シニア・パートナー / 執行役員
鍋島四郎(日本語翻訳監修), 日本アイ・ビー・エム株式会社, IBM コンサルティング事業本部, 金融サービス事業部, パートナー/理事
発行日 2024年1月30日